保険外併用療養費制度
【概要】保険外併用療養費制度とは?わかりやすく解説
【ひと言で簡単に説明】
保険外併用療養費制度とは、何ですか?
簡単に言うと、「3割負担の治療と全額自己負担の治療を、特別に同時に行っても良い制度」です。
【重要ポイント3選】
【練習問題】
60歳の男性。悪性腫瘍の治療中である。医療保険が適用される標準的抗癌化学療法の効果が十分でないため、海外ではすでに発売されている新薬を加えた併用療法を強く希望している。この新薬は国内ではまだ保険適用がなく、保険診療との併用も認められていない。
この新薬を使う場合の治療費に関する説明として適切なのはどれか。医師国家試験 第107回 C-17 (2013/平成25)
- a:「標準的治療も含めて全額が自己負担になります」
- b:「新薬の費用も含めて全額が保険で支払われます」
- c:「新薬の費用も含めて一部が自己負担になります」
- d:「併用する新薬の費用に限り自己負担になります」
- e:「新薬とは別の保険適用薬を使ったことにします」
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- a:「標準的治療も含めて全額が自己負担になります」
- 正しい。
- b:「新薬の費用も含めて全額が保険で支払われます」
- 誤り。
- c:「新薬の費用も含めて一部が自己負担になります」
- 誤り。
- d:「併用する新薬の費用に限り自己負担になります」
- 誤り。
- e:「新薬とは別の保険適用薬を使ったことにします」
- 誤り。
- a:「標準的治療も含めて全額が自己負担になります」
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【具体例】イメージを掴む
例えば、総医療費が200万円(保険診療:100万円、先進医療:100万円)の場合、
保険診療では100万円の3割負担で30万円
先進医療では全額自己負担で100万円
合計130万円の支払いとなります。
*本来は、保険診療の30万円に対して高額療養費制度が適用されるため、もっと支払いは安くなります。年収によりますが、実際は30万ではく9万程度になると思われます。
もし、保険外併用療養費制度が存在しない場合、混合診療が禁止されてるので、保険診療含めて全て自己負担となるため、200万円全て払う必要があります。
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【解説】詳しい説明でしっかり理解
従来、保険で認められていない治療を行なった場合、保険診療となる医療行為も含めて全て自己負担となります。これを混合診療の禁止と呼びます。しかし、新しい医療技術の出現や、患者のニーズの多様化に伴い、特定の療養に対して混合診療を認めるケースが出てきました。これを保険外併用療養費制度と言います。保険外併用療養費制度には大きく3つの分類があります。評価療養、患者申出療養制度、選定療養です。このうち、評価療養、患者申出療養制度は、将来の公的保険導入のための評価を行うもので、特定の医療機関でのみ行うことができます。一方、選定療養は、将来的な公的保険への導入が目的でなく、患者の快適性・利便性を向上させるためのものです。また、評価療養及び選定療養については、医療機関における掲示、患者の同意、領収書の発行が必須となっています。
以下、それぞれ説明していきます。
評価療養
具体例
- 先進医療
- 医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
- 医薬品医療機器法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用
- 薬価基準収載医薬品の適応外使用
(用法・用量・効能・効果の一部変更の承認申請がなされたもの) - 保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用
(使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がなされたもの)
患者申出療養制度
国内未承認の医薬品等を迅速に保険外併用療養として使用したい、という患者さんの思いに応えるために制定された制度です。患者さんからの申出を起点とし、将来的に保険適用につなげるためのデータ、科学的根拠を集積することを目的としています。その対象となる療養は、次の2つがあります。
- 先進医療の対象にならないが、一定の安全性・有効性が確認された医療
- 現行の治験の対象とならない患者に対する治験薬等の使用
つまり、患者が申し出をしたらどんな医療でも実施できるわけではなく、安全性・有効性も確認されない医療は対象となり得ません。
患者申出療養として全国で初めての医療を実施する場合、患者申出療養の開始までに原則6週間かかります。既に患者申出療養として前例がある医療を他の医療機関が実施する場合は、原則2週間で開始することができます。
選定療養
具体例
- 特別の療養環境(差額ベッド)
- 歯科の金合金等
- 金属床総義歯
- 予約診療
- 時間外診療
- 大病院の初診
- 大病院の再診
- 小児う蝕の指導管理
- 180日以上の入院
- 制限回数を超える医療行為
- 水晶体再建に使用する多焦点眼内レンズ
差額ベッド代については、しばしば医療機関と患者の間で問題となります。
保医発0624第3号(平成28年6月24日)において、医療機関が差額ベッド代を徴収する場合、以下の3つの事項を守るように求めています。
① 保険医療機関内の見やすい場所、例えば、受付窓口、待合室等に特別療養環境室の各々
についてそのベッド数、特別療養環境室の場所及び料金を患者にとって分かりやすく掲示
しておくこと。
② 特別療養環境室への入院を希望する患者に対しては、特別療養環境室の設備構造、料金
等について明確かつ懇切丁寧に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。
③ この同意の確認は、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うもの
であること。なお、この文書は、当該保険医療機関が保存し、必要に応じ提示できるよう
にしておくこと。
また、徴収してはならない例として以下が挙げられています。
① 同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者
側の署名がない等内容が不十分である場合を含む。)
② 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
(例)・救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常
時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者
・免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者
・集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者
・後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者(患者が通常の個室よりも特
別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)
・クロイツフェルト・ヤコブ病の患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整っ
た個室への入室を特に希望した場合を除く。)
③ 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選
択によらない場合
(例)・MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を
防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者
なお、「治療上の必要」に該当しなくなった場合等上記②又は③に該当しなくなったとき
は、(6)及び(7)に示した趣旨に従い、患者の意に反して特別療養環境室への入院が続けら
れることがないよう改めて同意書により患者の意思を確認する等、その取扱いに十分に配慮
すること。
すなわち、患者への十分な説明と同意があり、患者の治療に特別療養環境室が必要ではない、場合に差額ベッド代を徴収することができます。
*保険外併用療養費制度の歴史
1984(昭和59)年11月の健康保険法改正において、新しい医療技術の出現や、患者のニーズの多様化に適切に対応すべく特定療養費制度が導入されました。2006(平成18)年9月30日限りで、特定療養費制度は廃止され、保険外併用療養費制度がこれと置き換わる形で2006(平成18)年10月1日に開始されました。両制度の趣旨や内容に大きな変化はありません。
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健康保険では、保険が適用されない保険外診療があると保険が適用される診療も含めて、医療費の全額が自己負担となります。
協会けんぽ『保険外併用療養費』より
ただし、保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める「評価療養」と「選定療養」については、保険診療との併用が認められており、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、その部分については一部負担金を支払うこととなり、残りの額は「保険外併用療養費」として健康保険から給付が行われます。
【Q&A】〇〇に関するよくある疑問・質問まとめ【FAQ】
- 「医療・治療」ではなく「療養」という言葉が使われているのは何か理由があるんですか?
- 評価療養に治験が含まれていますが、治験バイトもこれに含まれるんですか?
【関連キーワード】
【参考サイト】
【ドラマ・漫画】
【国試対策】国家試験の過去問解説
国家試験の過去問で重要ポイントを確認しましょう!試験対策にもお役立てください!
医師国家試験
60歳の男性。悪性腫瘍の治療中である。医療保険が適用される標準的抗癌化学療法の効果が十分でないため、海外ではすでに発売されている新薬を加えた併用療法を強く希望している。この新薬は国内ではまだ保険適用がなく、保険診療との併用も認められていない。
この新薬を使う場合の治療費に関する説明として適切なのはどれか。医師国家試験 第107回 C-17 (2013/平成25)
- a:「標準的治療も含めて全額が自己負担になります」
- b:「新薬の費用も含めて全額が保険で支払われます」
- c:「新薬の費用も含めて一部が自己負担になります」
- d:「併用する新薬の費用に限り自己負担になります」
- e:「新薬とは別の保険適用薬を使ったことにします」
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- a:「標準的治療も含めて全額が自己負担になります」
- 正しい。
- b:「新薬の費用も含めて全額が保険で支払われます」
- 誤り。
- c:「新薬の費用も含めて一部が自己負担になります」
- 誤り。
- d:「併用する新薬の費用に限り自己負担になります」
- 誤り。
- e:「新薬とは別の保険適用薬を使ったことにします」
- 誤り。
- a:「標準的治療も含めて全額が自己負担になります」
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