災害医療
【概要】災害医療とは?わかりやすく解説
【ひと言で簡単に説明】
災害医療とは、何ですか?
災害医療とは、簡単に言うと「大規模災害時などに、医療のキャパシティを越える傷病者が発生した場合に行われる医療のこと」です。
【重要ポイント3選】
【練習問題】
災害医療について正しいのはどれか。
医師国家試験 第111回 E-07 (2017/平成29)
- a:災害拠点病院は市区町村が指定する。
- b:災害現場では医師は救急救命士の指揮下に入る。
- c:防災体制を整備する地域的単位を二次医療圏と呼ぶ。
- d:トリアージは医師以外の医療職も行うことができる。
- e:災害医療とは災害派遣医療チーム〈DMAT〉の医療活動のことである。
- 解答を見る
-
- a:災害拠点病院は市区町村が指定する。
- 誤り。
- b:災害現場では医師は救急救命士の指揮下に入る。
- 誤り。
- c:防災体制を整備する地域的単位を二次医療圏と呼ぶ。
- 誤り。
- d:トリアージは医師以外の医療職も行うことができる。
- 正しい。
- e:災害医療とは災害派遣医療チーム〈DMAT〉の医療活動のことである。
- 誤り。
- a:災害拠点病院は市区町村が指定する。
【具体例】イメージを掴む
執筆中
【Instagram|インスタグラム】
\公式インスタ/もチェック!
【書籍・参考書】おすすめ本を紹介
医学生や看護学生に人気の参考書です!
書籍リンク
オススメポイント
書籍タイトル
オススメポイント
【解説】詳しい説明でしっかり理解
災害医療とは、傷病者が多すぎて医療の提供が十分でない状態で行われる医療を指します。「災害」という言葉が入っていますが、必ずしも災害時に行われる医療を意味しません。災害発生時でも、医療の提供体制が十分整っており、傷病者に対して漏れなく処置が行えるなら、それは災害医療とは呼びません。逆に、災害ではない場合でも、傷病者が多すぎて医療を受けられない人がいるのであれば、災害医療と呼ばれます。例えば、2022年ハロウィンに韓国の梨泰院で起きた雪崩事故は災害医療と呼んで差し支えありません。こうした状況では、少ない医療資源を用いて、効率的に傷病者の救命措置を行うことが求められています。
災害医療には次の3つの大きな要素があります。
- トリアージ
- (応急的)治療
- 搬送
トリアージは次項で詳しく説明しますが、患者の重症度に応じて、治療の優先順位をつけることです。治療は、根本的な治療を行うのではなく、患者の命を繋ぐための応急処置を指します。近隣の病院で十分な治療を受けるまでの時間を耐え凌ぐことを目的としています。搬送は、災害現場から、医療資源が豊富な病院まで患者を移送することを言います。
これにより、防ぎえた災害死をなくすことが、災害医療の大きな目標です。防ぎえた災害死とは、医療資源が潤沢にある通常時であれば救えた可能性がある命のことです。
災害医療は5疾病・5事業の1つで、医療計画に定められています。
トリアージ
効率的な医療提供手法の1つがトリアージです。トリアージとは、患者の重症度に応じて、治療の優先度を決定することを言います。フランス語で選別を意味するtriageに由来します。選別という言葉の通り、治療するまでに時間的余裕のある人(軽症と中等症)、今すぐ緊急に治療が必要な人(重症)、助けることができない人(死亡)、に傷病者を分類します。このとき、トリアージタッグと呼ばれるタグを傷病者に装着します。タグの規格は統一されており、死亡(黒)、重症(赤)、中等症(黄)、軽症(緑)となっています。
トリアージタッグの判定は、医師や救急救命士だけでなく、訓練を受けた人であれば誰でも行うことができます。判定者は、原則その場で治療を行いません。状況は刻一刻と変化するため、傷病者全てに、繰り返し判定を行うことが期待されています。
判定方法には、START法やSALT法があります。従来、日本ではSTART法が採用されていましたが、近年はSALT法の有効性も注目されています。
DMAT
DMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは、大規模災害や新興感染症蔓延時に、地域に必要な医療提供体制を支援するために活躍する医療チームです。傷病者の生命を守るため、専門的な訓練を受けています。平成17年からその養成が開始されました。当初は災害時の対応を想定していましたが、新型コロナウイルスの影響により、令和4年2月から新興感染症等蔓延時の活動も、日本DMAT活動要項に追加されました。
DMAT1隊は、医師1名、看護師2名、業務調整員1名の4名を基本として構成されます。
災害発生時に、災害発生都道府県知事の派遣要請に基づき、DMAT指定医療機関より派遣されます。必要に応じて、被災していない他府県の医療機関からもDMATが派遣されます。
DMATとよく似たチームとして、精神医療に特化したDPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)もあります。
BCP
BCP(business continuity planning)は、日本語で事業継続計画と呼ばれます。災害などが生じた場合に、可及的速やかに業務を立て直し、継続するための事前計画のことです。このとき、災害によって生じた医療ニーズにも対応する必要があります。病院自体が被災した場合は、その避難方法についてもこの計画に含められています。
災害関連業務を立ち上げ、その業務レベルを向上するための計画です。通常業務に関しても、何を継続・早期復旧するべきなのか等も定めています。BCPの整備とこれに基づく研修・訓練は、災害拠点病院の指定要件となっています。
元々、阪神淡路大震災の時にマニュアルがないことが問題視され、災害対応マニュアルの作成が進んでいました。しかし、東日本大震災時に、そのマニュアルが不十分であったことが判明しました。これを打破するため、BCPの策定が求められました。BCPは災害対応マニュアルを大きく拡張したもので、より広い範囲まで状況を想定し、具体的な対応策まで記述する必要があります。
災害拠点病院
災害拠点病院は、災害発生時に災害医療を行う病院を支援する病院です。全国に765病院(令和4年4月1日現在)あります。災害拠点病院には、原則として各都道府県に1か所設置される基幹災害拠点病院と、原則として2次医療圏に1か所設置される地域災害拠点病院があります。基幹災害拠点病院は、地域災害拠点病院の機能強化版です。
災害拠点病院として指定されるためには、様々な用件があります。以下にいくつか例を示します。
- 24時間緊急対応可能な、救急救命センターあるいは2次救急医療機関である
- DMATの保有とその派遣体制が整備されている
- BCPの整備とこれに基づく研修・訓練を行なっている
- 災害時に少なくとも3日分の水を確保している
- 施設が耐震構造である
【データ】数値で現状を確認
DMAT(令和4年4月現在)
研修修了人数:15,862名
登録チーム:2,040チーム
災害拠点病院(令和4年4月現在)
基幹災害拠点病院:64病院
地域災害拠点病院:701病院
合計:765病院
【定義】
- タップで確認
-
災害医療とは需要が供給を上回る状態で行う医療で、時間・人材・資機材が限られた状況下において内因・外因を問わず様々な傷病に対して緊急対応が求められます。
日本救急医学会 ホームページ「災害医療」より
【Q&A】災害医療に関するよくある疑問・質問まとめ【FAQ】
- 災害医療と救急医療の共通点・相違点はなんですか?
-
共通点
傷病者に対し、緊急に救命処置を行う点
相違点
災害医療では、医療提供体制<傷病者数
救急医療では、医療提供体制>傷病者数
つまり、災害医療ではコスパよく救命を行う必要がありますが、救急医療では救命のために最大限の措置を取ることができます。
【関連キーワード】
・病院
・医師
・救急救命士
・看護師
【参考サイト】
https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/000962220.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000959291.pdf
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000089048.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000749617.pdf
【ドラマ・漫画】
【国試対策】国家試験の過去問解説
資格試験の過去問で知識を整理しましょう!試験対策にもお役立てください!
医師国家試験
災害医療について正しいのはどれか。
医師国家試験 第111回 E-07 (2017/平成29)
- a:災害拠点病院は市区町村が指定する。
- b:災害現場では医師は救急救命士の指揮下に入る。
- c:防災体制を整備する地域的単位を二次医療圏と呼ぶ。
- d:トリアージは医師以外の医療職も行うことができる。
- e:災害医療とは災害派遣医療チーム〈DMAT〉の医療活動のことである。
- 解答を見る
-
- a:災害拠点病院は市区町村が指定する。
- 誤り。
- b:災害現場では医師は救急救命士の指揮下に入る。
- 誤り。
- c:防災体制を整備する地域的単位を二次医療圏と呼ぶ。
- 誤り。
- d:トリアージは医師以外の医療職も行うことができる。
- 正しい。
- e:災害医療とは災害派遣医療チーム〈DMAT〉の医療活動のことである。
- 誤り。
- a:災害拠点病院は市区町村が指定する。
災害時における医療について誤っているのはどれか。
医師国家試験 第110回 B-19 (2016/平成28)
- a:医師の役割は応急手当である。
- b:都道府県の医療計画に示されている。
- c:災害拠点病院は被災患者を24時間体制で受け入れる。
- d:災害派遣医療チーム〈DMAT〉は自己完結型の医療救護を基本とする。
- e:大規模災害では長期間にわたってこころのケアを提供する必要がある。
- 解答を見る
-
- a:医師の役割は応急手当である。
- 誤り。
- b:都道府県の医療計画に示されている。
- 正しい。
- c:災害拠点病院は被災患者を24時間体制で受け入れる。
- 正しい。
- d:災害派遣医療チーム〈DMAT〉は自己完結型の医療救護を基本とする。
- 正しい。
- e:大規模災害では長期間にわたってこころのケアを提供する必要がある。
- 正しい。
- a:医師の役割は応急手当である。
- 詳しい解説
-
もちろん「応急手当」も重要ですが、他にも「トリアージ」や「搬送」、「他のメディカルスタッフへの指示」など多くの役割があります。他の選択肢がバッチリ正解なので、医師の役割を応急手当に限定しているような言い回しの「a」をバツとします。医師国家試験ってこういう問題多いですよね。
災害拠点病院について正しいのはどれか。2つ選べ。
医師国家試験 第106回 B-37 (2012/平成24)
- a:広域災害医療に対応する。
- b:医療救護班の派遣機能を持つ。
- c:救急救命士を配置する必要がある。
- d:免震構造であることが指定要件である。
- e:災害発生現場に最も近い病院が指定される。
- 解答を見る
-
- a:広域災害医療に対応する。
- 正しい。
- b:医療救護班の派遣機能を持つ。
- 正しい。
- c:救急救命士を配置する必要がある。
- 誤り。
- d:免震構造であることが指定要件である。
- 誤り。
- e:災害発生現場に最も近い病院が指定される。
- 誤り。
- a:広域災害医療に対応する。
災害初期の保健活動として優先度が高いのはどれか。
医師国家試験 第106回 G-32 (2012/平成24)
- a:防疫対策
- b:メンタルケア
- c:在宅者の訪問指導
- d:避難所の一般廃棄物調査
- e:仮設住宅入居者の自立支援
- 解答を見る
-
- a:防疫対策
- 正しい。
- b:メンタルケア
- 誤り。
- c:在宅者の訪問指導
- 誤り。
- d:避難所の一般廃棄物調査
- 誤り。
- e:仮設住宅入居者の自立支援
- 誤り。
- a:防疫対策
災害医療で誤っているのはどれか。
医師国家試験 第99回 D-04 (2005/平成17)
- a:化学災害では現場除染を行う。
- b:災害弱者には旅行者が含まれる。
- c:生物テロではボツリヌス症も考慮する。
- d:大災害では傷病者の振り分けを行う。
- e:PTSD への対応は災害医療終了後に始める
- 解答を見る
-
- a:化学災害では現場除染を行う。
- 正しい。
- b:災害弱者には旅行者が含まれる。
- 正しい。
- c:生物テロではボツリヌス症も考慮する。
- 正しい。
- d:大災害では傷病者の振り分けを行う。
- 正しい。
- e:PTSD への対応は災害医療終了後に始める
- 誤り。
- a:化学災害では現場除染を行う。
看護師国家試験
該当問題探し中